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神々の黄昏

「超人男」が感じた意見ダダ漏れブログ

『中世哲学への招待―「ヨーロッパ的思考」のはじまりを知るために』

読書

平凡社新書八木雄二氏著。

ドゥンス・スコットゥスの哲学を中心に、近代を準備した中世哲学について論じている。

 

まず中世哲学は、当然であるが、古代ギリシア哲学と近代哲学との中間に位置するがその両者といかなる関係を持っているのかが、中世哲学を学んでいないものでも解りやすく書かれている。中世のヨーロッパは暗黒時代といわれ、キリスト教会による抑圧が吹き荒れた時期でもあり、歴史的にもよくわかっていないことが多い時代と聞くが、それでも著者によって中世の風景が想像しやすいように、具体的に描かれている。

 

また、我々日本人は大学といえば政府が建てたりする教育機関だという印象が強いと思うが、ヨーロッパでは自由闊達な議論、インテリがいて様々な議論や論争がなされ、知的興味を持った若者が集まるようになり、子弟や団体ができていったことが大学誕生の基礎という。

 

さらに、普遍論争、神の存在証明、キリスト教神学が科学を生み出したこと、なぜキリスト教プラトン哲学と親和性があったか、そしてなぜ教会は学者が学生にアリストテレス哲学を大学で教えることに危機感を持ったのか。

 

キリスト教が社会紐帯として機能していたこと、日本人とヨーロッパ人では「自由」と「道徳」との考え方が違うこと、等々、現代の私たちにまで役に立つような記述も多い。中世哲学を学ぶものだけでなくヨーロッパ人とビジネスする人たちも読んでためになると感じる。

 

中世哲学は近代哲学や古代哲学と比べてみても日本語で読める著作の少なさからか、あるいは中世哲学=神学と考え興味を持つ人が少ないとか、そうであるからこそ著作が自然と高価になったりするためか、とにかく触れる機会が少ない現状である。

 

しかし昨今、中世哲学に関してわかりやすく解説してくれる本がちらほら出てきた。文庫でも新書でも、なるべく安く、手軽に学ぶことができることは幸いなことである。この本もそれに貢献してくれている本だといえる。